みなさんこんにちは!大城です。
今回は前回記事の「当団体スタッフの岸 あや乃が手話通訳士として堀江貴文氏の講演会に登壇しました!」の続編になります。
前回の記事は主にDEAFの情報保障における「手話通訳」がテーマでしたが、今回は「配信動画における字幕(テロップ)」をテーマに執筆いたしました。
講演会の手話通訳手配にあたって、控室にて会談をさせていただきました
今回のホリエモンさんの講演会における手話通訳の配慮にあたって、講演会が始まる前にデフの友人と控室にお邪魔しました。お忙しい中、主催者をはじめ登壇者のみなさんと岸 あや乃による手話通訳を通して会談するお時間を作っていただきました。
主に「DEAFの情報保障」をメインとした内容で会談を行いました。
会談した内容の一部を補足説明とともにご紹介したいと思います。
【対談テーマ】Youtubeなどの映像における情報保障(テロップ付け)のニーズについて
DEAFは耳が聴こえないため、音声情報を得ることが難しく、ほとんど目から情報を得ています。
そのため、テレビ、映画、Youtubeなどの映像による情報は、一般的には字幕(テロップ)を入れて視聴しています。
では、Youtubeなどでテロップがない場合はどうしているのか。
それはYouTubeにある「自動字幕起こし」という機能を利用しながら視聴することになります。
自動字幕起こしとは、音声を文字に変換して字幕として出力する機能です。
しかし、いくら自動で字幕が出力されるとはいえ、100%正確な字幕として出力はされず、変な単語になって文字起こしされてしまっていたり、声として認証されず字幕そのものが出力されないということがあるのが現状です。
そのためDEAFは、自動字幕起こしで変な単語が出てきたりすると、その直前と直後に言っていることを照らし合わせたりして、「大体こういうことを言っているのだな」と自分の中で解釈しながら視聴することになります。
この作業が、DEAFにとってはかなり負担がかかることなのです。
また、字幕が出力されなかった場合はDEAFにとっては情報が入ってこず、それが情報の遅れに繋がり、ついていけなくなる可能性が高いのです。
そのため、動画を視聴しての学習や、映像を視聴する際にテロップ(字幕)が無いと、動画学習が思うようにできなかったり、映像を楽しめなかったりして視聴を諦めてしまう人もいらっしゃいます。
私もYoutube等を視聴して学習することがよくあるのですが、
・この人の話を聞きたいのに字幕がなくて観れない…
・字幕がないため学びたいのに学べない…
なんてこともザラにあります。
そのため、「この動画は字幕がないから別の動画を探そう(観よう)」ということはDEAFにとっては日常茶飯事なのです。
「字幕の意味がわからない!」なんてことも…
この自動字幕起こしは変な単語が出てぐちゃぐちゃになっており、そもそもなんて言っているのかがわかりません。
そのため、解釈のしようがない場合もあるのです…汗
ちなみにこの現象が起きるのはYouTubeだけに限りません。文字起こしアプリでも度々同じ現象が起こることがあります。
変な単語が出てきたりするのは、周りがガヤガヤしていたり、雑音等が入ってしまったりなど、さまざまな要素が絡み合って起きる現象です。
この現象が、DEAFにとっての「情報の遅れ」につながる可能性があるのです。
「全てテロップをつける」という編集時間がないんです・・・
という方々もいらっしゃるかもしれません。
全てテロップ付けする編集が難しいようであれば、次の対策法があります。
Youtubeにて動画をアップロードした際に、自動で文字起こしされた字幕を修正することができます。
そのため、「全てイチからテロップを付けていく」という編集の手間が大きく軽減されます。
注: こうした字幕は機械学習アルゴリズムによって自動生成されたものなので、品質にばらつきが出る可能性があります。クリエイターの方には、まず専門サービスを利用した字幕の作成をおすすめしています。YouTube は常に音声認識技術の向上に努めていますが、間違った発音、アクセント、方言、雑音が原因で、自動字幕起こしでは動画の中で話されている内容を正しく表示できないことがあります。そのため、必ず自動字幕起こしの内容を確認し、正しく文字起こしされていない部分を編集するようにしてください
Youtubeヘルプ – 自動字幕起こし機能を使用する
お時間が許すようでしたら、ぜひこの機能も積極的にご活用頂ければ幸いです!
近年では、YouTubeやSNSのショートビデオにおいて自発的にテロップをつけて発信をする人が増えてきている
これにより生まれるメリット
- 聴者:音無しであっても映像を楽しむことができる
- DEAF:テロップという情報保障があるため、内容を理解することができ、楽しむことができる
これらのメリットが生まれ、誰もが楽しめるプラットフォームになりつつあると思います。
これはDEAFにとっては大変ありがたいことですね…!
しかし聴者側としては、
・テロップがある方がインパクトを残せる
・さまざまな表現ができる
などの気づきから、テロップが流行り始めたのではないでしょうか。
字幕が付いたテレビCMも少しずつ増えてきている…!?
ほとんどのDEAFはご存知かもしれませんが、実は近年では、
- CMの中に最初からテロップとして入っている字幕
- CMにテレビの字幕機能で字幕が出てくる
これらが増えてきているのです。
これもたいへんありがたいことですが、まだまだ音声のみでの情報しかないのもたくさんあります。
日本における難聴者(ろう者含む)人口は日本国内推計で約1,430万人いる!?
日本における難聴や補聴器装用の実情調査「JapanTrak(ジャパントラック)2018」によると、日本の難聴者率(自己申告)は11.3%で、自分が難聴であると感じている人は国内推計約1,430万人という結果になりました。実際には聴力が低下し始めていても、自分で気が付いていない人もかなりの数にのぼるということができます。
引用:ワイデックスがお届けする難聴と補聴器の総合サイト「みみから。」 – 難聴の現状
聞こえにくさをもつ人 約1,400万人以上
引用:聴覚障害者の情報アクセシビリティ – 総務省
JapanTrak2018(日本補聴器工業会)
全人口の11.3%でありそのうち補聴器所有率は14.4%、約200万人
残りの1,200万人以上は補聴器を使用していない。
こちらの資料はDEAFの現状・課題点などがわかりやすくまとめられています。
ろう者だけでなく、中途難聴者や軽度難聴者等の耳に聞こえにくさをもつ人(身体障がい者手帳を所持していない人も含む)が約1,430万人いるということです。
また、上記の総務省の資料には、「難聴を自覚している人」が約3,400万人(平成28年度総務省「字幕付きCM調査報告」)とも記載されています。
「約3,400万人=3人に1人が聞こえに問題を感じている」そうです。
国内だけでもそれだけの人数がいるため、動画におけるテロップのニーズはかなりあるということが考えられます。
仮に耳が聴こえにくい人1,430万人の1%だとしても、14万3,000人という大きな人数になります。
そのため、配信する動画にテロップをつけることは、動画配信者にとっても「観てくれる人が増えやすくなる」というメリットがあるのではないでしょうか。
さらには、「テロップをつけるのが当たり前」の社会になれば、自発的に動画配信を行うDEAFが増える可能性もあるかもしれませんね!
まとめ
- DEAFは情報保障がない場合は、自分で工夫しながら理解・解釈をしている(これが負担がかかる)
- DEAFにとっては、音声情報を目で理解できるようにする必要がある(文字起こし、手話通訳、筆談など)
- 近年では自発的にテロップをつける人が増えてきており、DEAFにとってはありがたい
- 日本国内に「耳が聴こえにくい」と感じている人は約1,430万人いるため、配信動画にテロップをつけることはニーズがあると考えられる
聴者の方々にはこれらをご理解いただき、頭の片隅に留めておいていただけると幸いです。
また、今後DEAFと関わりを持つことになった場合にスムーズな配慮もしやすくなることでしょう。
NPO団体DEAFブリッジの「聴こえない人と聴こえる人が平等に生きる社会をつくる」というビジョンに向けて邁進していきます!
ぜひ今後とも応援していただけると幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
前回の記事を見る→「当団体スタッフの岸 あや乃が手話通訳士として堀江貴文氏の講演会に登壇しました!」
筆者:大城 一記